花・植物のお話(第30回)  山裾の小さな彩り、ハダカホウズキ(裸酸漿)

冬に目を楽しませてくれる赤い実の一つです。茎は二又に枝分かれを繰り返して広がり、高さが1mを超えることもある多年草です。

紙質の葉は先が尖った卵形で茎に互生します。

花は8月から9月頃に葉の付け根に1~4個ぶら下がるように付きます。細長いカップを伏せたような萼の先に直径1㎝足らずの薄黄色い花を咲かせます。花の基部は筒状で先は5裂して少し反り返ります。実は5~7㎜位で秋になると赤く熟します。萼と実の境目がくびれるようになるのが特徴です。

お盆のお供え物として知られるホウズキと同じナス科ですが、このハダカホウズキは袋状の覆いが無いので「裸」と付いたそうです。小笠山では、そろそろ葉が落ちて茎も倒れ赤い実が目立つ頃でしょうか。 (会員:広谷和子)

花と実

ハダカホウズキ

 

全体



花・植物のお話(第29回)  枯れ野の灯、「カラスウリ(烏瓜)」

この季節、小笠山山麓の笹藪の裾は夏草が枯れて見通しが良くなり、鮮やかな朱色の実がぶら下がっているのが目に付きます。この実はウリ科つる性多年生草本のカラスウリです。スズメウリと同じように巻きひげを他のものに絡ませて上に横にと伸びます。

葉は角張ったハ-ト形で、若い葉は表面に毛が密生していてビロ-ドのような色と手触りがします。花は7月から九月、夕方から咲き初め夜に咲きますが、花びらの先端が糸状に分かれて広がり、繊細なレ-スを広げたようです。朝になると花は萎み、店じまいをします。これは花粉を運ぶ役目を夜行性のスズメガに頼っているためだそうです。ただ、先日の観察会(10月22日)のように朝になっても店じまいを忘れる花があり、朝の早い時間に見られることがあります。

実の中の種が結び文の形に見えるのでタマズサ(玉章)の別名があります。また、打ちでの小槌やカマキリの頭にも見えます。鮮やかな朱色の実は、リ-スなどの飾り付けとして人気があります。 (会員:広谷和子)

カラスウリ

実の断面

花(雄花)



花・植物のお話(第28回) 白いネックレス、可愛い「スズメウリ(雀瓜)」

スズメウリの花や実が秋から冬にかけて小笠山の道端の藪で見られます。

絡まった細いつるに1センチほどの球形の実がぶら下がっています。実は初めは緑色ですが熟すと灰白色になります。つるに付くたくさんの実は白いネックレスのようにも見えます。またその様子がカラスウリに比べて小さいので「スズメ(雀)」、そしてウリ科なので「ウリ(瓜)」の名が付いたようです。

スズメウリはウリ科スズメウリ属のつる性の1年草でやや湿ったところに生えます。巻きひげが他の植物に絡みついてよじ登ります。葉は深く切れ込んだハ-ト形です。8月から9月頃、葉の付け根に直径6ミリ位の深く5つに避けた白い花が咲きます。花は雄花と雌花に分かれていて雌花は写真のように下部に子房が目立ちます。実の頃、リ-スとして飾ると可愛らしく人気です。(会員:広谷和子)

スズメウリの熟した実

緑の実

花(左が雄花、右が雌花)



昆虫のお話(第12回) 小笠山で見られる「赤とんぼ」

童謡でも歌われている赤とんぼを知らない人はいないでしょう。赤とんぼ(赤トンボ)は、赤いトンボの総称です。専門的には、アカネ属というグル-プに含まれるトンボで、日本では約20種が分布しています。

小笠山では、アキアカネ、マユタテアカネ(顔面に黒い斑紋「眉斑(びはん)」が特徴)、リスアカネ(翅の先に褐色の斑)、ミヤマアカネ(翅の先に褐色の帯模様)などが見られます。赤トンボ以外の赤いトンボとしてはショウジョウトンボ、ウスバキトンボ、ハネビロトンボがあります。アカトンボは赤くなるのはオスです。未成熟のときには黄色っぽい体色で成熟すると赤く変化します。水平に近い姿勢で翅を広げて止まり、腹部を上げたり下げたりしているのを見かけます。産卵方法はトンボの種類により2種類あります。アキアカネやマユタテア

カネ、ミヤマアカネではメスが飛びながら水面に腹部の先をつけ産卵する打水産卵。リスアカネやナツアカネは飛翔しながら空中で卵を水面に落下させる空中産卵を行います。

8月27日の小笠山はまだ暑く涼しいところが好きな赤トンボを代表するアキアカネは見られませんでした。その代わりウスバキトンボが飛来し、マユタテアカネやリスアカネ、ミヤマアカネの赤いオスが見られるようになりました。 (会員:松嶋直紀)

マユタテアカネ♂未成熟

ミヤマアカネ

マユタテアカネ♂

ハネビロトンボ



花・植物のお話(第27回) ミョウガに似た葉、花のきれいなヤブミョウガ(藪茗荷)

ヤブミョウガが湿った日陰で大きな葉を広げ群生しているのを小笠山で見かけます。茎には先の曲がった毛があり、高さは50~100センチ位。名の由来のように葉の形がミョウガに似ていますが、上面に短い毛が密生してざらざらした手触りで、葉の付き方も違います。農産物としてス-パ-などで売られているミョウガはショガ科で、ヤブミョウガはツユクサ科で別の植物になります。

7月から8月に葉の中心から伸びた長い花茎の先に白い花をたくさん付けた茎が数段付きます。日陰で映えきれいです。花は雌しべと雄しべがそろった両生花と雄しべだけの雄花が混ざっています。

実はできたばかりは白く柱頭が目立ちますが、やがて実は緑色になり、さらに黒くなります。葉は冬に枯れますが、地下茎は残り、来春に備えます。繁殖は地下茎を伸ばすとともに実からの発芽でも増えます。 (会員:広谷和子)

 

全体

雄花と出来たての実

 

 

 

熟した実



昆虫のお話(第11回) 擬態し身を守る「ヨツスジトラカミキリ」

 

 

 小笠山には様々な昆虫が生息しており、カミキリムシ仲間も見られます。

私は6月にヨツスジハナカミキリを撮影しましたが、今月はヨツスジトラカミ

キリを撮影することが出来ましたので紹介します。

ヨツスジトラカミキリは、甲虫目、カミキリムシ科の体長16㎜~17㎜位の

昆虫です。体色は、虎模様が特徴。黒色で触角と肢は赤褐色、背面は濃黄色

で微毛に覆われて前胸背と上翅に黒色紋を持ちます。このような体色で見

事にアシナガバチに擬態し外敵から身を守っているのです。飛翔性が高く

すぐ飛び去ってしまいます。

幼虫は芋虫系。卵→幼虫→蛹→成虫と完全変態します。成虫の発生時期

は6月~9月頃。食べ物は成虫は花の花粉や蜜、幼虫は広葉樹の材部を食

べる植食性です。 (会員:松嶋直紀)

 


花・植物のお話(第26回) 涼しげな夏の花「イワタバコ(岩煙草)」

イワタバコは暖かい地域に多い多年草でタバコ(栽培植物の煙草)の葉に似ていて湿った岩場に生えることから名前が付きました。

岩場の割れ目など、少しの隙間に根を下ろし、年々株を大きくして葉の大きさと数を増やしていきたくさんの花を咲かせるようです。根茎から出た葉は垂れ下がり、10~15㎝位の花茎を伸ばしその先にひとつから多数の花を付けます。葉柄(3~10㎝)には翼があり、葉身は大きいものでは長さが30㎝、幅は15㎝ぐらいになります。葉には毛が無く滑らかですが、中には毛のある「ケイワタバコ」という変種もあります。

花は直径2㎝位の星形で花弁は5枚に分かれ根元は筒状になっています。縁は薄紫色、中心部は濃い紫色で白い帯状の部分の奥の方は橙色でおしゃれです。花の後、実を結び、冬は地上部が枯れ休眠。翌年の春先、まずしわしわの葉を出し、夏に再び花を咲かせます。

イワタバコは小笠山山麓の湿った崖、特に小笠池の周囲のあちこちに群生しています。ひんやりとした場所に咲き花言葉は「涼しげ」で今が花盛りです。当会が行う8月5日の観察会でもたくさん見られることでしょう。是非ご覧ください。 (会員:広谷和子)



動物のお話(第4回) じっと見つめる天然記念物の「ニホンカモシカ」

ニホンカモシカ(日本羚羊)は、ほ乳類偶蹄目ウシ科の動物です。全長は1.2m前後、体重は30~40kgで本州、四国、九州地方に分布する日本固有種。1995年、文化財保護法により国の特別天然記念物に昇格指定され保護された貴重な動物です。

私は小笠山で5回目撃しましたが、じっとこちらを見つめる場合が多いです。出合ったら何もせず見守ってください。

寿命は15年ほどとされていてオスとメス共に縄張りを持ち単独で行動します。胃袋はウシと同様に4室に分かれていて反すうすることで消化しにくいものでも食べることが可能です。毛色は黒褐色や灰褐色をしていますが地域により変化があることが知られており、黒ぽっいものから白ぼっいものまで様々です。顔の下にはひげの様な羽毛がふさふさ生え、頭には10~15㎝程度の円錐形の角を持って

います、顔には分泌物をだす眼下線があり、目が4つあるように見えることがあります。この眼下線は分泌物を出し樹木などに擦りつけ縄張りを主張するためのものと言われています。

近年、カモシカが500m未満の低山にも分布を広げていて、一部地域では植林や農産物の被害に悩まされていると聞きます。

(会員: 松嶋直紀)



花・植物のお話(第25回) 虎の尾の様な花「オカトラノオ(丘虎の尾)」

蒸し暑くてうんざりする季節、小笠山の麓にも群生しているオカトラノオが見られます。サクラソウ科の草地に生える多年草で、草丈は60㎝から1mくらいです。葉は長楕円形で交互に付きます。

茎の先からは花序(花のかたまり)が穂状に伸び、小さな白い花を多数付けます。6月に入ったころから、直径1㎝くらいの深く5つに切れ込んだ花が下から順に咲きます。花序は、初めは真っ直ぐ上を向いていますが、成長につれ先が垂れ下がります。その様子がまるで虎の尾のようで、主に山野で見られるので「オカトラノオ(丘虎の尾)」と名前が付いたそうです。

地下には細長い地下茎が多数あり、これを伸ばして増えるので群生します。たくさん花を付けたオカトラノオが風に揺れている様子は凉しげです。長い間咲いていますので見かけたら近づきよく見てください。(会員:広谷和子)

群生の様子

花序



鳥のお話(第5回)   姿もさえずりも美しい「オオルリ(大瑠璃)」

日本では夏鳥。小笠山にはゴ-ルデンウイ-ク前に来ます。オスの青色が美しいヒタキ科の鳥、オスは頭部から尾にかけての背面が美しい青をしている。目元から首にかけては真っ黒で、お腹は白い。メスは対象的に全身が地味な茶褐色をしている。全長は16㎝位。

ルリビタキ、コルリと並んで瑠璃三鳥と呼ばれているほど美しい。鳴き声から日本三鳴鳥に数えられ、ピリ-リ-ピリ-リ-ジッチとさえずる。低山の渓流沿いの林を好み、飛んでいる昆虫を餌として捕らえる。繁殖期のオスは見通しの良い梢でさえずる。崖や岩の隙間などに巣をつくり繁殖する。 (会員:松嶋直紀)

オオルリの♂

オオルリの♀



昆虫のお話(第10回) 擬態する不思議な昆虫「ナナフシ」

小笠山を歩いていると木の枝に6本の脚が生えたたような体型の昆虫が

いました。ナナフシ科のナナフシ(ナナフシモドキ)です。

細長い体で葉や枝などの植物に擬態しています。木の枝や葉の茎、色などに似せて天敵から見付けにくくしているのです。オスは濃褐色で大きさが60ミリ前後、メスは緑色から褐色をしていて大きさが85ミリ前後。本州、四国、九州に分布し、日当たりの良い雑木林、林縁の葉の上下、草上で見られます。サクラやカシ、コナラなどの葉を食べます。

寿命は短くて成虫になって2~4ヶ月程度。単為生殖という珍しい生態を

持ち、メスはオスとの交尾なしで卵を産み増やすことができます。擬態して

いるとはいえ鳥などの天敵に食べられる個体が多いです。不思議なことに

ヒヨドリなどに食べられても子孫を残すことができます。それは卵が乾燥し

た種のようなため卵を持つナナフシが鳥に食べられても消化されなかっ

た場合、卵が糞に残り、その卵が孵化するのです。ナナフシは不完全変態(サナギにはならない)で、数回の脱皮を繰り返し数ヶ月で成虫になります。幼虫時のみ再生能力があり脚が取れても生えてきます。

生きる力、生命力、不思議な生態に驚かされます。木の枝や葉の上などに擬態しているので注意し観察してナナフシを探してみてください。 (2023.6.1 会員:松嶋直紀)

 


花・植物のお話(第25回) 昔から重宝な薬草「ドクダミ」

初夏になるとドクダミが日陰の湿った所で清楚な姿を見せてくれます。

一見白い花に見えますが、白い花びらのように見えるのは蕾を包んでいた総苞片という葉の変形した部分です。真ん中の黄色っぽい塔のような部分が花で、小さな花がたくさん集まっています。花弁はなく、先(花柱)が3つに分かれた雌しべと3本の黄色の葯(花粉の袋)を付けた雄しべで一つの花になります。葉はくすんだ緑色のハ-ト形で、緑などに赤紫色を帯びることがあります。地下茎は白く長くて盛んに枝分かれします。柔らかくて切れやすいので一旦根付くと駆除が難しい雑草でもあります。

ちょっと触れただけで独特の臭気がして嫌がれるドクダミですが、昔から重宝されてきた薬草です。名前に「ドク」がつきますが、このドクダミには毒はなく、十もの薬効があると言われることから「十薬」と呼ばれ、民間薬として用いられてきました。子どもの頃、祖母がおできに葉を炙って貼り付けて治してくれたことを思い出します。他にも蓄膿症などの治療にも用いられたようです。現代では、お茶や化粧水として広く利用されています。

小笠山の自然歩道沿いでも良く見かけますので立ち止まり近づいて観察してみてください。 (2023.5.25  会員:広谷和子)

群生

葉と花

花の拡大



昆虫のお話(第9回) 撮影が難しい「ハスジカカツオゾウムシ」

 

ハスジカカツオゾウムシは、ゾウムシ科カツオゾウムシ亜科の甲虫です。体長は12mm前後。上翅背にV字模様がある黒色の個体と茶褐色の個体が見られます。カツオゾウムシの名は鰹節の形とカビ付けされた表面が似ていることに由来するということです。

ゾウムシの撮影は近づきすぎると警戒して死んだふりをして草むらに落ちて逃走してしまいます。そのため撮影は難しいです。幼虫はヨモギ、アザミ、キク科の植物の茎を食べます。成虫はタデ類に集まり、キク科の植物に産卵します。

ゾウムシは口部が伸びた形をゾウに見立てた名前です。小笠山はゾウムシの宝庫ということですので、今年は1種類でも多くを撮影したいです。

(会員:松嶋直紀:


動物のお話(第4回) 愛らしく見えるが攻撃的ですばしこい「イタチ」

イタチは、ネコ目、イタチ科イタチ属に分類される哺乳動物です。体刑は全長30~40センチ。メスはオスより小さく1/3程度の胴長短足で、寿命は驚くほど短命で1.9歳ほど。日本に生息しているイタチは在来種のニホンイタチと外来種のシベリアイタチ(チョウセンイタチ)。近年、西日本の市街地で見られるほとんどがシベリアイタチといことです。

餌は主としてネズミ類ですが、雑食性で小鳥の卵や昆虫類、カエル、足に水かきがありときには水に入りザリガニなどの甲殻類魚類も補食します。愛らしい見た目とは裏腹にイタチの性格は攻撃的ですばしこい。頭が入れば3~4センチの穴があればすり抜けることができ、泳ぎや木登りも得意で垂直の壁を登ることもできます。しかしシベリアイタチは水が苦手です。

イタチは夏と冬で毛の色が変わります。夏毛は茶褐色、冬毛は薄い山吹色になります。ニホンイタチは目の周辺に灰色の毛があり胸と腹に白い斑点があります。尻尾もシベリアイタチに比べ短いです。

小笠山で出合い撮影した写真の個体は、7~8メ-トル距離で私がカメラのシャッタ-を押す音に興味を示し近づいてきました。これはおそらく子どものニホンイタチと思われます。 (会員:松嶋直紀 2023/4/9 撮影)


動物のお話(第3回) 無類のカエル好き臆病だが毒を持つ「ヤマカガシ」

 

ヤマカガシは爬虫類有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属に分類されるヘビ。ヤマカガシのキ-ワ-ドは蛙好き、猛毒、臆病の3つ。毒はマムシの約4倍もあります。かまれた場合は血がとまらなかったり頭痛がしたりします。脳内出血や腎不全になる場合もあるそうです。毒蛇ですので気をつけましょう。

このヘビは生息地域や個体差によって体色の変化が激しく、おなじ種類なのに地域によって色が違います。静岡県では赤と黒模様ですが近畿地方では緑がかった色、中国地方では青みがかっています。

ヤマカガシは臆病です。だからちょっとやそつとのことではかみついたりしません。人の気配がしたらさっさと草むらに逃げてしまいます。私が近づいてもずっと絡み合っていました。多分交尾をしていた様です。 (会員:松嶋直紀)


花・植物のお話(第24回) 今が花盛り淡い色合いの「モチツツジ」

モチツツジはサクラやミツバツツジが終わった頃、尾根や林道沿いのの日当たりの良いところで咲き乱れています。

花は甘い香りを漂わせ、花色は薄紫色から薄いものまで様々です。葉には花と同時期に開く大きめの春葉と花の後で芽を取り囲むように

生える夏葉があります。春葉は冬に紅葉した後に落葉します。夏葉は年によって緑のままだったり赤みを帯びたりして春を迎えます(半落葉)。萼や花柄などには腺毛(毛の先に腺点がある)があってそこから分泌される液滴に粘着姓があり強く粘ります。これは花粉を運ぶ役目をしない虫を捕らえ、花を食害から守るためといわれています。野外で観察していると捕らえられた虫を見ることもあります。このように鳥もちのように粘ることが「モチツツジ」と名の由来です。

花弁は5枚で付け根は繋がっています。一枚の花弁には濃い赤紫の斑点があり、とても美しい花です。園芸種のヒラドツツジは見るととそっくりですが、私はモチツツジの方が繊細な感じがします。小笠山では、この時期どこでも見られる花です。 (会員:広谷和子)

見事なモチツツジの花

粘着性の腺毛で捕らえれた虫



キノコのお話(第1回) ヒトデのような形のキノコ「ツチグリ(土栗)」

とてもユニ-クな形をしたキノコが林道脇の土手の斜面にありました。ツ

チグリです。

このキノコは、幼菌のとはき丸い形で地中に埋まっていて、成長とともに

地上に顔を出します。幼菌のときはベ-ジュ色から白色で成長とともに褐

色になります。外皮の内側には銀白色の模様があります。成長すると外皮がヒトデのような形になり、6から10ほどに避けて星になります。この形は座布団の上に胞子の入った袋が乗っているようにも見えます。成熟すると子孫を残すため袋の頂上の穴から胞子を放出し残します。外皮は乾湿に合わせて開閉し、乾燥すると外皮がまるまり胞子の袋を包んで全体に球形になるようです.土の中に栗のような根があることがツチグリ(土栗)名の由来と言われています。私はこの面白い形のツチグリを小笠山で初めて見ました。 2023/4/3  (会員:松嶋直紀)

 


樹木のお話 (第18回) 爽やかな香気有する「クロモジ(黒文字)」

小笠山を歩くと雑木林でクロモジが淡黄緑色の小さな花をたくさん付けているのが見られます。新しいい葉が開き、その葉の脇から下向きに咲く花は可愛く、葉の色とも同調し美しいものです。半透明の花びら、球形の花序(花の集まり)が美しさを一層引き立てています。

このクロモジはクスノキ科の落葉低木で樹高は2~5m。雌雄異株の木で雌株と雄株があり、黒い実のなる雌株に咲く花には雄しべがありません。大きな特徴は独特の香りがあることです。枯れた枝でも鼻を近づけると心地よい爽やかな香気をはっきりと感じます。この香りは「リナロ-ル」というアロマを代表する成分によるものということです。枝葉や果実から採取されるクロモジ油にある抗菌や鎮静、消炎作用などの効果を活用して様々な商品が生み出されています。昔から高級な楊子の材料として使われ、「楊子の木」とも呼ばれます。化粧品、入浴剤などにも使用。最近はクロモジを原料とするのど飴も販売されています。

名前の由来には諸説りますが、樹皮に黒い斑点があることに由来しているようです。 2023/3/21 (代表:中山幸男)

 

クロモジの花(雄花)



花・植物のお話(第23回) 春を実感、茶草場に咲く「ハルリンドウ」

雄性期から雌性期、結実期まで観察・撮影

ハルリンドウは、日当たりの良いやや湿り気のある所で育つ、リンドウ科の草本です。

昼間、暖かさを感じるようになる頃、ロゼット状に広がった根元の葉(根生葉)から花茎(約10㎝)を急激に伸ばします。そして直径2~3㎝長さ0.8~1.5㎝ぐらいの筒状漏斗型をした紫色の花をつけます。大きな株だと10本以上の花茎が伸びることもあります。花の咲く頃には、根生葉は茶色くなってしまいます.花弁が集合した花冠は、5裂して裂片の間にやや小さい副花冠があるので10裂しているように見えます。花の中心部の地色は白ですが、濃い紫色の筋が真ん中に向けてあります。花は初めに雄しべが成熟して花粉を出し(雄性期)、その後雄しべは外側に倒れて先が二つに割れた雌しべが大きくなり(雌性期)ます。このように雌雄が時期をずらして成熟(雌雄異熟)するのは自家受粉を避けるための工夫と言われています。

ハルリンドウは小笠山山麓の茶草場で春めいて良く晴れた日にたくさん咲いています。お茶農家の方々が毎年丁寧に草を刈ってくださるお陰で見ることができる春の訪れを知らせる花です。 (会員:広谷和子)

茶草場に咲くハルリンドウ

ロゼット状の根生葉

結実期


雄性期の花

雌性期の花



動物のお話 (第2回) 半地上、半地中で暮らすモグラに似た「ヒミズ」

ヒミズは、モグラ科の動物で日本固有種です。外見はモグラに似ていますが、体はモグラより小さく、モグラの1/3位、体長8センチ位。尻尾の長さは4センチ位、重さは約20グラム前後です。体毛は黒っぽく、鼻先が長い。地中の浅いところで生活しているため前足もモグラより小さく、低めの山や草原等の落ち葉などの下の地表近くに浅めの溝を掘って暮らしているのです。完全な土の中の暮らしではなく、半地中、半地上で活動しています。雑食性で、昆虫、ミミズなどを捕食するほか、植物の種子や果実などを食べるようです。

小笠山でヒミズと私が出合ったのは今回で2回目。前回は動きが早くて撮影出来ませんでしたが、今回は動かず撮影出来ました。 (会員:松嶋直紀)

 


花・植物のお話(第22回)どちらが表?「リョウメンシダ(両面羊歯)」

リョウメンシダは、全国の山地帯で見られる常緑のシダで小笠山でも湿気の多い少し暗い林の下でよく見かけるオシダ科カナワラビ属のシダです。葉の表と裏が淡緑色で全体として細長い卵形の葉は大きいものでは60センチを越えます。

根から茎(葉柄)を伸ばしその先に葉(葉身)を付けます。葉身は中心に一本の軸(中軸)があり、その軸の両側に枝状に軸(羽軸)が多数つきます。その羽軸からもう一度枝状に軸(小羽軸)に分かれ、3回羽状複葉といわれる葉です。小羽軸に付く葉(小羽片)は細かく切れ込んでいて柔らかい質感なので繊細な感じがします。

リョウメンシダの最大の特徴は葉の表と裏が同じ色、同じ質感をしていることです。葉の表と裏、両面が胞子が付く時期以外は同じように見えるので「リョウメンシダ(両面羊歯)」の名前が付いています。表の葉の軸には少しへこみがあり、冬、葉の裏に胞子嚢を付けます。

このシダが生えるところにはスギが良く育つのでスギ植林地指標植物になっているそうです。比較的覚えやすいシダですので小笠山を歩いて見つけ観察してみてください。(会員: 広谷和子)

全体写真

胞子嚢群


葉の表

葉の裏



樹木の紹介(第20回)  アサギマダラの食草「キジョラン(鬼女蘭)」

このごろ小笠山を歩くと白い綿毛の付いたキジョランの種を見かけることがある。2月14日の小笠神社旧参道跡の調査のときもあちらこちらにあった。調査が終わり車で山を下っていくと路面に無数の種が落ち、ふさふさした白い長い毛が輝き、時折吹く風で動いていた。あまりの数の多さに驚き、車を出て暫く眺めた。どこかに果実があるはずと林の中を見上げていると、西風が梢を鳴らす度に森の中から綿毛を付けた種が次々と上空に舞い上がっているではないか。この見事な光景に釘付けられた。

キジョランはアサギマダラの幼虫の食草で、秋に生み付けられた卵から孵化した幼虫が葉を食べ成長する。運が良ければ越冬している幼虫を葉裏に見付けることができる。またキジョランはつる性木本のキョウチクトウ科で、葉はハ-ト形、夏から秋に咲く花は白く小さいが、果実は大きく十数㎝もある。和名は種の長くて白い毛(冠毛)を鬼女の髪にたとえたもの。

この時期、小笠山を注意して歩けば白い冠毛を付けた種に気づき観察することができる。 2023/2/19 (代表:中山幸男)

 

キジョランの花

キジョランの果実


果実が裂開し外に出た冠毛

落下したキジョランの種



鳥のお話(第7回) 黄緑色の美しい「アオバト」

アオバトは、ハト科アオバト属に分類される鳥です。全長は33㎝位で全身が黄緑色で美しい鳩です。写真のアオバトは雌。雄は羽の一部が赤褐色です。和名は緑色の体表からと考えられています。日本語の青は、若葉を青葉ともいうように緑色も含む言葉で江戸時代に描かれた「百鳥図」に青鳩との記載があります。一方、鳴き声の「ア-オアオ」と聞こえるからとの説もあるようです。

アオバトには海水を飲む珍しい習性があります。真夏の7~8月は多くのアオバトが海水を飲みに海岸の岩礁(テトラポット等)で見られます。塩分を補給していると考えられます。

生息場所は餌となる木の多い山地の林です。多様な果実や若葉を主に食べます。森の中で出合うことか難しい鳩ですが、小笠山を歩いていると鳩のような鳥が飛んできて枝に停まったので撮影出来ました。アオバトは海水を飲みに海に来るのを探す方が出合うことが出来るかも知れません。 (会員:松嶋直紀)


花・植物のお話 (第21回)  子だくさんの「コモチシダ(子持羊歯)」

コモチシダは小笠山の山麓の斜面でよく見かけるシシガシラ科の常緑性のシダです。葉は先がとがった細長い卵形で、垂れ下がるように生えています。小羽片(小さな葉)は厚くて表面は革質で裏側に巻き込んでいます。大きいものだと2メ-トルになることがあるそうです。

このシダは夏から秋にかけて葉の表に無性芽(条件が整うと親と全く同じように成長できる芽)をたくさん付けます。また葉の裏には小羽辺

の中肋(葉脈)に沿ってイモムシのような胞子嚢群(胞子の塊を入れた袋の集まり)が並んでいます。こうしてコモチシダは次世代を胞子でも無性芽でも増えることが出来ます。子孫を残すため二つの方法を身につけたのです。

なぜか親しみのある名前ですが、これは葉の表面にたくさんの無性芽を付けたようすから「子持羊歯」の名前が付いたのです。その無性芽はそのまま育つとコモチシダになるはずなのですが、私はひしめき合っているコモチシダを見たことがありません。なぜなのでしょうか。植物たちが冬の眠りについている今頃ですが、樹木もシダも春を待っています。 (会員:広谷和子)

 

コモチシダ全体

無性芽

胞子嚢群



昆虫のお話 (第7回)

準絶滅危惧種、貴重なトンボ「カトリヤンマ」カトリヤンマはヤンマ科のトンボで丘陵地の樹林に近い水田や池沼などに生息します。今年の夏、私は小笠山の山裾にある小さな水路脇で個体を見つけ、撮影することができました。

大きさは67ミリから76ミリ位で大きな複眼と腹部のくびれが特徴の黒ぽっい感じの中型のヤンマです。雄の尾手は長く、成熟個体は折れていることが多いです。東海地方では7月上旬から出現し、11月末頃まで見られます。このカトリヤンマは日中は樹林の下枝に懸垂して静止していることが多く、夕方になると元気に飛び回る黄昏活動性の強いトンボです。このように黄昏時に変幻自在に飛び回るのは餌の蚊を食べるためで、このことが名前の由来といわれています。産卵場所周辺ではホバリングの静止飛翔で縄張りを保ちつつ雌を待つことが多いです。

近年、個体数が減少しており、レッドリストになっている県が多い希少種です。静岡県でもカトリヤンマは準絶滅危惧種に指定されている貴重なトンボです。  (2022.12.19 会員: 松嶋直紀)



花・植物のお話 (第20回)  冬に美味しい「フユイチゴ(冬苺)」

フユイチゴは関東から西に生えるバラ科キイチゴ属の常緑低木。果実が晩秋から冬に熟すのが名前の由来です。別名、カンイチゴ。

地面に這うように広がり、葉は艶のある濃い緑色の幅広いハ-ト形で、2~4の浅い凹みがあり交互に付けます。8月頃に葉の付け根に白い花を数個付けます。顎の外側が毛に覆われていて、雄しべ、雌しべはともに多数です。受粉した雌しべがぷっくり膨らんで寄り集まってひとかたまりの実(集合果)になります。

実には雌しべの先(柱頭)が髭のようにたくさん残っています。また実は11月頃から赤くなり始め寒さの厳しくなる頃に熟し甘酸っぱくなります。彩りの乏しい季節に歩いていて赤い実が見えると嬉しいものです。触ると実がポロリと付け根(花床)から外れ、口に入れると甘酸っぱさが口中に広がります。小笠山でも林道脇などでたくさん見られます。味わってみてはいかがでしょうか。(会員: 広谷和子)